乙事諏訪神社 (諏訪郡富士見町)

2015.10.31 / 地域を知る / 編集部さん

「乙事」は「おっこと」と読みます。
ここでピン!と来るかた、もしかしてアニメーション「もののけ姫」に登場する「乙事主」を想像してる?
そう、「乙事主」の名前はこの富士見町乙事(おっこと)からつけられたといわれています。
他にも、甲六とかエボシとか、登場人物には富士見町の地名を連想する名前が取り入れられています。

ちょっと話がそれましたが、富士見町乙事は古い地区です。
13世紀初頭には現在の乙事地区と思われる地名が登場しています。

そこに鎮座する諏訪神社。
かつては乙事諏訪神社上社と乙事諏訪神社下社が存在し、それ以前は地区の氏神が祀られていたようです。
17世紀には諏訪社上社本宮の社殿は、本宮の新築のため乙事諏訪社上社に移築されました。
このとき移築されてきた社殿は16世紀に織田信長が諏訪に侵攻した際に諏訪社を焼き討ちした後に再建されたときの社殿。
諏訪地域内にある建築物の中ではかなり古いのです。
これだけでもドラマチックなのですが、さらに!
19世紀には上社と下社へ交互に遷座する形になり、やがて上社と下社が合祀、そして社殿の国宝指定と火事による焼失と、何ともドラマチックな歴史を歩むのです。

つまり、現在の乙事諏訪社の社殿は、昭和23年の火災後の修復とはいえ、中世の様式を色濃く残す社殿なのです。

大きく反った屋根が印象的です。

小さな造りではありますが、彫刻は非常に手の込んでいることがよくわかります。
後世に登場する大隅流や立川流の力強さとは趣が異なり、植物のモチーフを優美に繊細に描きます。
金具についている諏訪社の神紋「梶紋」もよく観察すると葉の形や描かれる根の数も違います。


欄干部分には他ではちょっと見慣れない形の梶紋

これは数々のできごとをかいくぐってきた乙事諏訪社の歴史を語るものでもあります。

さらに特筆すべきは、御柱を建てる位置。
通常、一の柱がある場所になんと二の柱。
二の柱の位置に三の柱。

謎めいた乙事諏訪社、ね、気になるでしょう?

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